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コラム



校医として「荒牧こどもの食事を考える会」に関って

 2012年春、群馬県の「総合表彰」を受けました。前橋・在宅ケアネットワークの会の機関誌「ささえあい」にどんな趣旨での表彰だったかを書いてほしいと原稿依頼があったので投稿します。
私は市立荒牧小学校の内科校医を長く務めており、このことから今回の表彰となったものと思われます。しかし現在、荒牧小では、児童、先生、保護者と学校医、学校栄養士とが連携して地域ぐるみの学校保健活動が活発に取組まれています。この活動は全国の模範として高く評価されており、参加する私にとっては単に校医を長年務めたというだけに止まらない特別な感慨があります。
よい機会なので荒牧小の「あらまき こどもの食事を考える会」の活動を紹介したいと思います。

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前橋市立荒牧小学校では平成一八年の学校保健委員会で児童の朝食をテーマに取り上げることを相談しました。その際、校内だけでなく家庭も地域(学校医、学校歯科医、学校栄養士)にも参加して貰い、地域ぐるみの「食育」活動として継続的に取組んでゆこう・・・と話し合われ、PTA会長を会長とし学校が事務局となり「食育の会」が発足しました。
翌一九年一月、五・六年生の朝食アンケートを実施。その結果、児童の九割が毎朝朝食を摂っていることなどが明らかになりました。会ではこれを一方通行に終わらせず保護者に返してゆこうと話し合いました。結果を冊子にまとめ、栄養士による献立の栄養バランスの情報を載せる、出された意見、質問には校医、栄養士がコメントを返す、集まりを長続きさせるため会議は一時間に限定する。など様々な工夫、アイデアが出し合われ、熱の入った活動が開始されました。
同年六月には会名を「あらまき こどもの食事を考える会」に改名し、愛称も「あら食」に決定。以来、平成一九年度には、「簡単朝ごはんレシピ集」。
平成二〇年度、「我が家の伝統食・行事食」。
平成二一年度、「フードロス(ゼロ)を目指して」。
平成二二年度、「えいよう、健康、ありがとう」。
平成二三年度は「旬の野菜を食べて免疫力を高めよう」、など毎年決められたテーマに応じ調査活動を行い、この報告とともに若い保護者の日々の食事に参考になる献立集が掲載された冊子が次々に刊行されました。
冊子の表紙には食べたいものなど子供から親へのメッセージ欄も設けられ、校医、学校栄養士らのアドバイスもうまく盛り込まれ、親にみて貰う工夫が凝らされました。
校内では保健委員の児童が下級生の教室に出向き保健活動の成果をスライド形式で発表するなど、創意的な学級活動も行われています。

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この結果、荒牧小は平成一九年から五年連続で県の健康推進優秀校に選ばれています。平成二一年には全国優秀PTAとして文部科学大臣表彰も受賞しました。全国の模範なのです。荒牧小のホームページには「あらまき こどもの食事を考える会」のコーナーがあり、これまでに発行された冊子が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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最近の学校はいじめや不登校などが多発し、親はモンスターペアレント化し公教育は危機的な状態にあるかのようぬい考えられがちです。しかし荒牧小は違います。他校の様子は分かりませんが「あらまき こどもの食事を考える会」の活動は児童の学校保健活動が各家庭、地域社会とよい関係で影響を与えあっている貴重な成功例だと思います。
学校は地域社会の中心です。学校が家庭と保護者を正しく把握し、まともな行動を呼びかければ確実な反応が返ってきます。もちろん毎年、学年が変わるとPTA役員は揃って変わり、校長先生以下教員も異動がありますから、特定の事業の継続にはそれなりの覚悟と心得が必要です。しかし、少しの情熱と工夫と努力があれば地域社会の可能性はまだまだ大きいと思います。

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開業医の仕事は、日常診療のほかに学校医、産業医などがあります。どの医療機関でも地域住民の健康を願い日々医療を行っていますが、学校や企業などで行われる保健予防の活動は残念ながら軽視されている現状にあり、不十分だと思います。
今日、疾病構造は変わり医療は生活習慣病対策が中心です。生活習慣病は啓発、健康教育、食事の摂り方の教育が極めて重要ですが、成人になってからの教育は困難なものです。子供の頃から正しい理論を身につけることが大切なことは論をまたないところです。荒牧小の学校保健活動はこうした社会的な健康づくりの要請に応える貴重な経験です。
校医をお勤めの先生方は、ぜひ一度「あらまき こどもの食事を考える会」の活動を参考に各々の学校で紹介していただければ有難いと思います。

すでに到来している少子高齢社会の現実の中で、若い人たちの育成ほど大切なものはないと考えていた矢先の今回の表彰でした。荒牧小校医としての表彰は、私にとって最も嬉しいことでした。
身に余る光栄と思いつつ五月一七日、群馬会館での表彰式に夫婦して参列しました。「これからも後輩育成にため一層の努力を」との天の声が聞こえたような気がします。

平成24年10月
前橋在宅ケアネットワークの会機関紙「ささえあい」69号掲載


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